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2017年12月18日

第3回 「開発に挑む学生たちの挑戦」

今回はAUTcube2の開発に取り組む西尾研究室の学生たちを紹介します。

前田一朗さん

宇宙への興味が強かったのでこの研究室を選びました。部活動でもSTELA(宇宙技術研究部)に所属しています。
AUTcube2の開発では、720度宇宙撮影を行うためのカメラを担当しています。宇宙空間では、太陽と真っ暗な宇宙という明暗の差かが非常に激しい環境での撮影になります。このような場合、普通のカメラでは画面が白く飛んでしまったり、黒く潰れてしまったりします。そこでAUTcube2に搭載するカメラにはHDR(ハイダイナミックレンジ)という機能をつけることにしました。HDRとは1回の撮影で、暗い部分に合わせた画像、中間の画像、明るい部分に合わせた画像というように、露出(明るさ)を変えた写真を3枚撮影し、それを合成して、自然な画像を作り上げる技術です。今は、このHDRのシステムプログラムの開発を進めているところです。AUTcube2では、ラズベリーパイという手のひら大のコンピューターにHDRのシステムプログラムを入れ、それをカメラと接続して720度撮影を行います。
講義や実習、部活動で培ってきたものづくりの能力を生かし、宇宙での撮影を成功させたいです。

高垣蒼さん

この研究室を選んだのは、望遠鏡で見た月の大きさに感動したり、流れ星が空中で分裂する様子などを見たりして、宇宙への興味が深かったことに加え、映画「スターウォーズ」の影響もあります。
AUTcube2では姿勢制御プログラムの改良を行っています。AUTcube2が宇宙空間で回転してしまうと、搭載されたLEDが地球の方を向かず、地上に光を届けられなくなってしまいます。そのため回転を静止させ、LEDを正しく地球に向けるためのプログラムが必要になるのです。
宇宙は面白そうだからと選んだ研究室でしたが、4月の記者会見では、多くの報道関係者を前に、本当に自分がここにいていいのかと思いました。4月に研究室に入ってすぐのことで、まだ何も分からない状態だったからです。
けれど今は、分からないなりにできるところまでやってみようと思えるようになりました。記者会見を経て覚悟が決まったみたいです。

宮田一広さん

研究室を選んだ頃は、プロジェクトに参加できるため「やりがいがありそう」という理由だけでした。でも今は、来年の打ち上げを楽しみにしながらAUTcube2の開発を進めています。
僕が担当しているのは「地上から肉眼で見える」ためのLEDのシステムです。地上まで光を届けるために、LEDをとても明るくしなくてはならないのですが、そのためには様々な課題があります。1つは電流の問題。LEDにかける電圧を高くすると、電流が流れすぎてLEDが壊れてしまいます。そこで、AUTcube2の電源となるリチウムイオン電池の電圧を調整する必要があります。もう1つがLEDから発生する熱の問題です。一般にLEDは白熱電球などに比べれば発熱量が非常に少ないのですが、これだけの明るさだと、かなりの熱が発生します。そのままにしておくと、周辺のプラスチック部品などを溶かしてしまうため、熱を逃がすヒートシンクなどを用いる工夫が必要です。このような問題を一つ一つ手探りで解決しながら製作を進めています。
AUTcube2は大きなプロジェクトですから失敗はできません。今はとにかく、しっかりやらなければという責任感を持って製作に取り組んでいます。

永島優さん

AUTcube2のフレームを作るのが担当です。AUTcube2に外からかかる力や、他の部品の形状などを考えながら、ネジの長さや位置、フレームに使う材料などの検討をしています。また、CADを使って図面を書いたり、CAMというシステムを使って工作機械を動かしたりしながら、AUTcube2に必要な材料を自分で切って組み立てています。
この研究室を選んだ理由は、実家がCADを使う設計会社のため、自分もCAD技術を身に着けたかったからです。そして産学連携を行っているこの研究室なら、地元の企業とも関わることができると思ったからです。宇宙を目指すだけでなく、自分の将来の足がかりとして、AUTcube2の制作に取り組んでいます。
4月に行われた記者会見はとても緊張しましたが、先輩たちの資料を見て事前に準備することで、何とか乗り切ることができました。
今後もやるべきことを一つひとつこなして、打ち上げまでの関門を確実に突破していきたいです。

研究室に入った頃は分からないことばかりだった4人が様々な経験を糧に今はひとつの目標に向かって力を合わせています。
打ち上げまでの残りわずかな期間も、彼らの挑戦は続きます。

左より
宮田 一広さん、永島 優さん、高垣 蒼さん、前田 一朗さん

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